ラーメンの起源を求めて<熱風大陸編>

9.<誰かが愛を叫んでる>



へそ

エアーズロックに登る。途中で一緒になった美人のお姉さん二人組と登る。なんでも東京から来たとのこと。そういえば日本はゴールデンウィークなんですね。さて、今回は美人のお姉さんと一緒にお山登りしてうふふ、という話ではもちろんなくて、蠅の話です。さっきまではおぞましい量のハエが僕たちの顔の周りをじゃんじゃかじゃんじゃやかと飛び回っていても風が強くなるといなくなる。それがまた風が弱くなると顔の周りを狙って飛んでくる。なんなのかな、と思っていたら、こいつらは風が強いときは人の背中にひっついているんですね。美人のお姉さんの背中にごっそりと蠅がしがみついているさまはなんかもう、無常を感じずにはいられない光景でしたね。こいつらは本当に冗談抜きで人の嫌がるところを狙って飛んでくる。コツらのちっぽけな脳みそはほぼすべて人に嫌がらせをするために使われており、その恐るべき性格は、変態的に執拗でねちっこく、人の嫌がることに快感を感じる腐れ外道というところでしょうか。

こいつらが耳元をぶんぶん飛び回る羽音を聞き、顔の周りをなめまわしながら徘徊しているさまはまさしく世紀末としかいいようがない。ジョン・レノンもこのような下等生物どもをこの世から消滅させることには大賛成してくれるはずです。もしショットガンがあったら僕は迷うことなく顔中を這い回る蠅もろとも自分の頭を吹っ飛ばしていたことでしょう。

山頂でお姉さんがたと別れちょっとお昼寝。
気持ちよく寝ていたら、
「……だーーーー!!!」
という叫び声で目を覚ます。
なんだ、と思ったら、次は
「メグミ―――!!!!」という声が聞こえてきました。

僕はね、もうピンときちゃいましたよ、この寝起き3秒の頭でさえ、もうほんと一瞬で。

はぁ、とため息をつく。

いやマジかよ、やめとけって、てかこっちが恥ずかしいからやめてくれって、と神に祈るが、僕の思いもむなしくその男はあとを続ける。

「愛してるーーー!!!」

ジョン、やっぱり神様っていないんだね。

その後二人は誰もいなくなるまで待ってよかったね、うふふだね、という趣旨のことをたっぷり20分ばかり語り合って下山していきました。僕はそのあいだこういう場合ってやっぱり隠れといてあげるのが大人の優しさだよな、でもいつまで続くかわからんぞ、というか盗み聞きしてるみたいでなんか嫌だよな、でも俺悪くねーし、という自分に言い訳するような感じでずっと悶々としながら時が過ぎ去るのをひたすら待っていたわけですね
。 盗み聞きした話を書くのも人が悪いのでほどほどにしておきますが、まぁ二人の話を要約すると次のようなものでした。

曰く、メグミがいかにタクヤのことを好きであるか、また、タクヤはいかにメグミが好きであるか、ということ。

曰く、二人に待ち受けているであろう幸せな将来について。

曰く、二人の恋は人類の歴史始まって以来の大恋愛であるに違いないであろうということ。

ふう、やれやれだ。

二人がいなくなるのをずっと待っていて、もう一眠りしてしまった僕が下山すると、入り口のゲートが閉まっていました。ゲートの入り口で恨めしそうにこちらを見上げている観光客の人々にいや、登った時は開いてたんですけどね、と言い訳しながら下山するハメになりましたが、とろけるような赤に染まった山肌から、地平線のかなたに真っ赤な夕日が沈んでいく様はなかなかの見もので、まぁこれが見れただけでもよしとしましょう。

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