ラーメンの起源を求めて<熱風大陸編>

5.<茨城なめんなよ>



モーテル

メルボルンからアデレードまでが800キロ。クソ寒い雨の中を200キロ必死に走って、残りが600キロ。あさイチでがんばればなんとか明日にはアデレードに到着できる予定。
モーテルの受付のお姉ちゃん(美人)に明日どこまで行くのって聞かれてアデレードまで、って答えたら「すごい!」ってちょっとキラキラした目で見てくる……。なんでかな、と思ってモーテルに備え付けてあったこの町から主要な街までの距離一覧表を見てみたらアデレードまで850キロ、所要時間9時間、ってなっていました。スタートより50キロ増えとるやんけ!9時間も走ったらけつから脳みそが出てまうわ!と思わず関西弁で独り言つぶやいてしまいました。でもお姉ちゃんのきらきらした目が痛くて、まあ、あさイチでぶっ通しで走るから何とかなるよ、と全く誰も幸せにしないどうでもいい見栄を張ってしまいました。

メルボルンから直接アデレードに行くのではなく大きく迂回して海岸線を流していくのだから距離が増えるのは当然なんですね。

飛び出し注意

アデレードから出るまでにひたすらに道に迷い、アデレードからポートオーガスタまででさらに手ひどく道に迷うというげんなりする一日でした。この日は100キロも走ったあげくにその労力の全部が全くの間違いで、おまけに何年かぶりの立ちごけまでやらかすというさんざんな一日でした。
走っているうちにこれはおかしいなと思い、焦って止まったところが傾いた砂利の上で、そのままなすすべなく立ちごけ。コケると近くにいた牛が草をもしゃもしゃ食みながら顔を上げ、不思議そうにこちらを眺めています。
立ちごけはやはり誰かに見られるとすごく恥ずかしいものです。たとえそれが牛でも。
いや、違うねんな、ちょっと焦っとってな、うっかり傾いたところで止まってもうたんねん、と関西弁で言い訳をしてしまいました。
まぁ牛のほうは相変わらずもしゃもしゃやっているわけですが。
さっさとバイクを起こすとしましょう。
……。

足元が砂利なのと、傾斜が思ったよりもきつくて、バイクがうまく起こせない。

まいったなぁ……。とちょっと焦る。さっさと起こさないとプラグがガソリンで湿ってしまうし、ていうかそもそもここどこやねん、こいつはまずいぞと思いリトライ。やっぱりうまくいかない。

誰か手伝ってくれないかなぁ……。
しかし周りにはウシしかいない。もしゃもしゃもしゃもしゃもしゃ。

リトライ。やはりだめ。

ウシ。もしゃもしゃもしゃもしゃ。

……。

テメェ見てねえで手伝えよ!
と、思わず牛に怒鳴りましたがこいつは相変わらずのウシみたいなマヌケ面で草食ってましたね。

もしゃもしゃもしゃもしゃ。

……。

ウラァァァ!とか叫びながら起こしたら今度は成功、しばらくはエンジンがかからなかったので、ちょっと時間をおいてセル回して無事再始動。茨城なめんなよ、と捨て台詞を残してその場を走り去りました。牛の野郎は変わらずもしゃもしゃやってましたが。明日はステーキにしてやろう。

結局そんなこんなで砂漠の入り口、大陸縦断道路、スチュアートハイウェイまで5日もかかってしまった……。

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