ラーメンの起源を求めて
8.<ブラックホールに捨てないで>
写真右側の白い建物は厠とかいてあるらしく、一応トイレらしい。
一応というのは、この中にあったのは僕の知る概念から大きく外れたものだったからです。不潔?いやいや、不潔なのはいいんですよ、トイレですからね。そりゃ構わない。
だけどこの建物はそう言う代物じゃない。中に穴がある。その穴をどうつかってより不快で不潔な空間を作り上げるか、というコンセプトのもとに作られた建物のように思えるのです。共産党と12億の人民が、その誇りと威信と文化と4000年の歴史と労力と血と汗と涙としょんべんとうんことゲロと痰のすべてを注ぎ込んで、いかに不快な建物をつくれるか。
誰が一体何の目的でそんなことをしているのかはわからない。だが、とにかくそういうルールで、このゲームはおこなわれているのだ。
その努力の結晶がこの厠。トイレの中はハエが気絶するほどの臭気で満たされ、正体不明の汁を吸いこんで不気味に変色した穴があった。
こんなことをして誰が得をするのか全く見当なんてつかない。あるいは誰も得なんかしないかもしれないし、するかもしれない。もしかしたらこの穴の中で世紀の大発明が行われているのかもしれない。永遠に続くんじゃねぇかっていうそのブラック・ホールの暗闇の奥で、汚物の妖精さんたちが集まってわいわい感謝祭のパーティでもしてるのかもしれない。そしたらすこしはほんわかするが、まぁそんなことはどうだっていい。とにかく、
俺は、
絶対に、
こんなところでしょんべんはしねぇ
俺はこんなところでしょんべんたれるくらいなら、そこらへんで立ちしょんべんして、怒られるほうがはるかにましだと思うがね。むしろ、さっきまで自分の体の中にいて、こんな日本から何千キロも離れた町まで苦楽を共にしてきたしょんべんやらうんこやらを、このおぞましい穴の中に捨てるなんて、気の毒すぎる。
そんなトイレさえも、この世の中にはあるんだということを知った。
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